京都・西陣にある築約120年の京町家をリノベーションした。同じ西陣の旅館・京旅籠むげんの別邸として営業する一棟貸しの宿である。
京町家のリノベーションを考える上で、空間を高さ方向に豊かさにすることを試みた。そこで、典型的な京町家の間取りに木製パネルによる「筒」を挿入した。筒は内部空間を曖昧に仕切り立体的な構成と連続をつくりだす。床の高さが少しずつ異なる空間が連続し、様々なすき間がうまれ視線の流れがつくられる。高さによる分断と視線による接続により、京町家は新しい空間となる。
荒土壁となぐり加工床のリビング、漆喰による白の間、黒ベンガラ和紙による黒の間、半地下の小客室、多様な使い方ができる水平面のステージ、その下の子どもが籠もって遊べるスペースなど、多彩な空間を用意した。また、∞パターンで繰り抜かれた玄関内扉や、作家の手仕事による唐紙や照明器具など、現代的なデザインと日本の伝統とが融合した調度品たちを随所に配している。
80㎡ほどの小さな宿に様々なスケールの空間と館主のこまやかな心配りを込めた。旅の醍醐味は、その土地の日常を非日常として楽しむことである。そんな宿泊空間を「mugen plus」は目指している。

 

 

ENDO SHOJIRO DESIGN http://endo-design.jp/

建築家:
Endo Shojiro + Tada Masaharu
写真提供:
松村康平