隣家が密集した細路地にある長屋のリノベーション。京都市内中心地から程近い仏光寺周辺には古くからの長屋が残り、本敷地は建物の中を通り抜ける「トンネル路地」の奥にある。そこは住民たちで共有する私道や電線、井戸、小祠などがあり、濃密な地域性が伺い知れる。このような立地で、地域の環境に貢献しつつ住まい手のプライバシーを確保することが設計の主題となった。
そのため、既存長屋の中心に向かって三角形に切り込むように減築し、長屋の中に外部をつくった。そこにブリッジを渡し三角形の外部空間を2分し、住居の中から楽しむ坪庭と路地から緑を感じる前庭とした。また、ブリッジ上下は外部のまま繋がり、前庭から坪庭、屋根の開口部を抜けて外気は流れる。立体的に組み込まれた外部空間は、60㎡ほどの住居の中に柔らかく自然光を取り入れ、連続して切り替わる豊かな景色を生み出している。
この住宅は夫婦2人のための都心の住まいである。インテリアには住まい手の趣味であるアンティーク家具や調度品が並ぶ。リビングはなく、生活の中心となるのはダイニング・キッチン。そこからブリッジやロフトを介して繋がったワークスペースがある。2階には最低限のしつらえの白く明るい寝室がある。密集した路地奥の小さな住宅に、住まい手のための世界を実現している。

 

 

ENDO SHOJIRO DESIGN http://endo-design.jp/

建築家:
Endo Shojiro + Tada Masaharu
写真提供:
松村康平